
私は、2004年にWebデザイナーとして独立し、2007年に株式会社それからデザインを設立、これまで20年近く、中小企業〜小規模事業(個人事業主も含む)のホームページ制作に関わる仕事を続けてきました。
そのあいだに「ホームページの作り方」は、技術の進歩とともに様々な方法がでてきましたが、いまだに
- ホームページはよくわからない
- 制作会社の見積もりが高い
- 自分で作りたいがむずかしい
- なにからはじめていいかわからない
- 持ってはいるものの自分ではなにもできない
などの悩みを抱えている方は、減るどころか増え続けている印象があります。ホームページ業界で長く活動してきた一人として責任を感じるとともに、なぜそのような方が多いのか、どのようなアドバイス必要かについて、本記事では、私自身の20年の経験をもとにお伝えしてみようと思います。
申し遅れました、佐野彰彦と申します。私は、中小企業向けのWebコンサルティングの会社「株式会社それからデザイン」と、スモールビジネス向けのWebサービス開発会社「株式会社smallweb」の2つの会社を経営しています。
なるべくむずかしい言葉を使わずに、わかりやすくお伝えすることを心がけて書いていきます。あなたのお役に立てれば幸いです。
目次
執筆者プロフィール
佐野 彰彦(さの・あきひこ)
事業家・デザイナー。株式会社smallweb代表取締役、株式会社それからデザイン代表取締役。神奈川県出身、1974年生まれ。
「ビジネスとデザインの統合」をテーマに活動。中小企業のWebサイト活用に豊富な実績。著書に「経営者のためのウェブブランディングの教科書」「ウェブ担当者1年目の教科書」(共に幻冬舎)。2015年、2016年グッドデザイン賞受賞。
この記事の想定読者
- 個人事業主〜中小規模のビジネスオーナー
- これから起業しようとしている、起業してまもない方
- 自社ホームページについての課題を感じている
- 高額な費用はかけずに、ホームページを立ち上げたい
- 基本的なホームページの知識を身に着けたい
なぜホームページはむずかしいのか?
突然ですが、あなたは車を運転しますか?
私は運転歴20年以上になります。もちろん車を運転することは問題なくできますが、車をつくる(製造する)ことはできません。ごく一般的なドライバーですので、旅行や買い物など、目的地にたどり着くために運転するだけなので、車の製造知識がなくても、困ったことは一度もありません。
このことを、ホームページに置き換えて考えてみると、とてもおかしいことに気づくはずです。
あなたが、ホームページを必要としている理由はなんでしょうか?
ホームページを通じてビジネスを成功させることだとするなら、ホームページ自体を作る技術ではなく、ホームページを運転すること、つまりホームページを通じて情報を発信することだけできればいいはずです。
目的は「ホームページを自分で運営できる」こと
繰り返しになりますが、個人や中小規模のビジネスオーナーにとって、最も大切なことは、ホームページが自分のビジネスに何かしらの貢献をしてくれることです。
そして、費用面でも労力面でも、できる限り負担を少なくすることではないでしょうか?
だとするなら、「ホームページの作り方」そのもので、悪戦苦闘してしまうことは避けるべきです。車の例と同じように、作ることではなく運転すること、つまり、「ホームページを通じて、自分でストレスなく情報を発信できる」ことがベストな状態です。
ここが最も大切なポイントですが、多くの人が誤解したまま進んでしまうので、冒頭に挙げたような悩みを抱えてしまうことになりがちなのです。
目的は「ホームページを自分で運営できる」こと
ホームページの制作とホームページの運営は別のことです。このことをしっかりと念頭において、続きを読み進めてください。
自社ホームページを所有するために必要な3点セット
とはいうものの、まずは自社ホームページそのものが手に入らなくてははじまりません。
自社ホームページを所有する、つまりホームページを公開して、インターネットを通じて多くの方に見てもらえるようにするためには、以下の3点セットが必要になります。
- ドメイン(インターネット上の「住所」)
- サーバー(インターネット上の「土地」)
- HTMLデータ(インターネット上の「家」)
の3つです。

ホームページを公開するためには、上記のドメイン、サーバー、HTMLデータが必要ですが、ホームページ作成のプロではない方が、それぞれを個別に取得して、設定作業を行うことは、非常にハードルが高いものになります。
車の例に例えるなら、エンジン、アクセル、ボディをそれぞれ取り寄せて、自分で組み立てて車を製造するようなことです。当然、電気系統やその他の専門技術が求められます。通常の車の運転者がやることではないのは当たり前です。
ホームページの場合でも、ネットワークやセキュリティなどの知識がない方が、ドメインやサーバーを自分で用意して、セットアップを行うことは、かなり難易度が高いと考えるのが自然です。
今では、格安のレンタルサーバーなどもあるので、コスト面ではハードルが下がっていますし、ある程度のインターネット関連の知識や技術を持っている方なら、ドメインとサーバーをセットアップして、自分でホームページの公開環境を組み立てることも、不可能ではありませんが、私自身の経験上、一般的なビジネスオーナーがこのような作業にチャレンジすることは、あまりおすすめしません。
「ホームページの作り方」で検索して出てくる情報の多くが、レンタルサーバー会社の宣伝のページとなっており、自社のサーバーを借りてもらい、ドメインを設定し、WordPress※をインストールし、ホームページを作成する方法を案内しています。
しかし、これは「自分でドメインやサーバーを設定する」という手続きが求められるため、人によってはここで挫折してしまい、「ホームページは自分ではむずかしい」という心境に陥ってしまいかねません。
では、一般的な人が、ストレスなく、自社ホームページを所有するためには、どうすればいいのでしょうか?
そのことを、このあとにわかりやすく解説していきます。
※WordPress(ワードプレス)とは、サーバーにインストールして利用するCMS(コンテンツマネジメントシステム)のひとつで、世界中で広く利用されているホームページ構築ツールです。本格的なホームページも実現できるなど、メリットも多くありますが、初心者にとっては操作がむずしかったり、セキュリティ面で不安があるなどのデメリットもあります。
ホームページの作り方、メリットとデメリット
それでは、本記事のメインテーマをお伝えしていきます。
ビジネスオーナーにとって、いったいどのようなホームページの作り方が適しているのか、その本題に切り込んでいきたいと思います。
まず、前提としておきたいことは、あなたの本来やるべきことは、「ホームページを作ることより、ホームページの運営である」ことを忘れないでください。
ホームページを作ること、すなわち、ホームページを立ち上げるまでに使う労力や費用はなるべく少なくして、ホームページを通じて情報を発信できるようになることこそが、ベストです。
あなたには、あなたの本業があります。たとえば、美容師の方であれば、仕事はお客様の髪型を素敵にして喜んでもらうことであり、ホームページの作成方法に苦戦してしまっては本末転倒です。本業を圧迫してまで、ホームページを作ることにパワーを割くべきではなく、ホームページを通じてお客様に魅力を発信することが目的になります。
ですので、ホームページの立ち上げ時は、なるべく苦しまずに、使えるものは使うことが前提になります。
ホームページの作り方(なるべく本業に集中する方法3つ)
上記の前提から、一般的なビジネスオーナーの方が、1からHTMLを学習し、ドメインやサーバーを個別に取得して、自分でセットアップまでを行う方法は、おすすめしません。
なるべく、本業を圧迫せず、自社ホームページを立ち上げることができる方法は、以下の3つに集約されるはずです。
- ホームページ業者に依頼する
- 知人・友人に依頼する
- ホームページ作成ツールを利用する
それぞれのメリットとデメリットを、考えてみましょう。
メリットとデメリット
作り方 | メリット | デメリット |
---|---|---|
業者に依頼 | 独自のHPが実現できる、プロに直接依頼できる | 費用が高くなりがち、自分で編集しにくい |
知人・友人に依頼 | 気軽に相談しやすい、安く依頼できる(かもしれない) | 徐々に依頼しにくくなる |
ホームページ作成ツールを利用 | 自分で編集できる、低価格で運営できる | 大規模なホームページには向かない |
「業者に依頼する」場合は、よい業者と出会えれば、独自性の高いホームページをオーダーメイドで作成してもらえる魅力があります。一方で、当然ながら費用が高くなりがちなことと、作り方によっては、自分で編集しにくい場合が考えられ、そこはデメリットにもなります。
「知人・友人に依頼する」場合は、気心知れた方に相談できる安心感が魅力的です。また友達次第ではありますが、安価に引き受けてくれる可能性もあるでしょう。実際に、ホームページが得意な知人がいる場合、この方法を選択する方は多いですが、いつまでも好意で受けてくれる人は少ないはずで、友人関係の悪化の恐れもあります。
「ホームページ作成ツールを利用する」場合は、自分のタイミングでいつでも編集したり、情報を発信できるのが、何よりも大きなメリットになります。業者や知人の都合に左右されずに、タイムリーな情報発信ができ、なおかつ低価格での運営も可能です。一方で、大規模なホームページや独自の機能などは実現しにくく、不向きでもあります。
ホームページ作成ツールとは?
「ホームページ作成ツール」というものに聞き馴染みがない方もいると思います。ホームページ作成ソフトとは違うの? 自分でツールを使うなんてむずかしいのでは? と思うかもしれません。
でも心配いりません。上記で紹介したメリットから、選択肢のひとつとして知っておく価値があるはずです。ホームページ作成ツールとはどういうものかについて、まずは基本的なことをお伝えします。
ドメイン・サーバー・HTMLは自動で用意してくれる
ドメイン・サーバー・HTMLを自分で用意して設定することは、初心者にとってはハードルが高いことは前述のとおりですが、ホームページ作成ツールを使用することで、そのハードルがぐんと下がります。
ホームページ作成ツールは、サーバーと一体になっているため、むずかしい設定をすることなく、ホームページの中身、つまり文章や画像を投稿するだけで、ホームページが作成できる優れものです。
ブログやSNSをやったことがある方なら、操作そのものはなんなくできるはずです。SNSの経験がない方でも、パソコンでメールを送信する程度のことができれば、ホームページ作成ツールは扱えると考えて良いと思います。

ドメインやサーバーのことは意識せず、ホームページの運営に集中できるのは、大きなメリットです。
文字と写真を投稿するだけで、ホームページに反映される
ホームページ作成ツールの操作イメージはこんな感じです。

あなたがやることは、基本的には、文字と写真と投稿するだけなので、サーバーやHTMLなどのむずかしい知識を身につける必要なく、ホームページにどんな情報を掲載するか、その内容に集中することができます。
ホームページ作成ツールの種類
ホームページ作成ツールは、現在多くのものが発表されていますが、基本的な仕組みは上記で紹介した通りで、大差ありません。価格や機能には多少なりとも違いがありますが、多くのサービスで、無料体験ができるようになっているはずです。
まずは、自分が操作しやすいと感じるもので、お試し体験をしてみることがおすすめです。
ホームページにかけるべき予算と相場について
ホームページが欲しいと思った時、最も気になることのひとつが費用だと思います。
もちろん、なるべく低価格であることは大切ですが、大切なことは、制作時にかかる費用だけではなく、運営にかかる費用を確認しておくことです。
たとえば、業者に依頼する場合は、初回の制作費用として相場は30万〜100万円(依頼内容により大きく異なる)ほどの見積もりになりますが、それ以降も、サーバーやドメインの維持費、ページを更新したりする際に都度業者へ依頼するとなると、月々の費用も数万円ほど必要になると考えておく必要があります。
もちろん、費用対効果として、それに見合うだけの価値があればいいのですが、ビジネス規模が小さい会社や個人事業主の場合は、ランニングコスト(運営費)は大きな負担となってしまうケースがあり、最悪の場合はせっかく作ったホームページを閉鎖しなくてはならないということもあり得ます。
ホームページの作成費用だけでなく、運営費用をはじめに想定してから、あなたのビジネスに見合う方法を選択することがなによりも大切です。
ホームページ作成ツールの場合は、費用面では業者に依頼するよりもかなり安価に運営することができます。セキュリティ面でも、ホームページ作成ツールを提供する会社がしっかりサポートしてくれるため、低予算でのホームページ運営が可能になります。
ビジネスの成長に合わせた、ホームページの適切なあり方
ホームページの作り方には、いくつかの道筋があり、それぞれにメリットもデメリットもあることは紹介してきた通りです。
本記事もそろそろまとめになりますが、私自身の失敗談も紹介しておきたいと思います。
私は、2004年にWebデザイナーとして独立開業し、これまで数多くのホームページ制作を請け負ってきました。その中で、比較的大きな規模の会社様からのご依頼もありましたし、創業して間もないスモールビジネスオーナーとのお付き合いもありました。
駆け出しの頃は、自分の仕事を軌道に乗せることに必死だったこともあり、ご依頼主のビジネスの規模を考慮する余裕もなく、プランやお見積をご提示していました。その中で、ある小さな会社様は、メンテナンス費用が負担となってしまい、ホームページ自体の運営をあきらめてしまうケースがありました。
せっかく素敵なホームページを作ってご提供できたとしても、その後、小さなビジネスの場合は、オーナー自身が自分で運営できる状態でなければならないことを痛感したのです。
最後に、ビジネスのステージごとにおすすめの、ホームページの適切な作り方をまとめておきます。ぜひ参考にしてください。
ステージ1:創業初期など、まだこれからの時期
ホームページ作成ツールを利用することがおすすめです。まずは自分自身でホームページを立ち上げ、なるべく低価格で運営するようにしましょう。創業初期は、SNSやブログだけでもいいと考える方もいますが、自社ホームページがあることでビジネスの信用力は格段に高まります。
ステージ2:創業から数年、まだ不安定な時期
ホームページがない、または十分に活用できていない場合は、やはりホームページ作成ツールを活用し、しっかりと情報発信を行っていきましょう。自社の商品やサービスの魅力を、自社で発信していくことが大切です。SNSやブログなども併用して、情報発信力を高めることがおすすめです。
ステージ3:安定しているが、もう少し成長させたい時期
ホームページをより活用するために、集客にも力を入れていきましょう。ホームページ作成ツールでも十分なSEO対策が可能ですし、ブログやSNSとの連携を強化していくことで強いホームページに育ちます。予算が割ける場合は、マーケティング提案に強いWEB会社に相談することもよいでしょう。
ステージ4:業績好調、大きく拡大する時期
すでに十分な売上や利益が出せている状況であれば、いよいよ専門のWEB会社に本格的な依頼をする時期です。可能であれば自社にもWEBの知識があるホームページ担当者を採用します。これまで自社でホームページを運営してきた経験が、業者とのやりとりにも役に立つはずです。
コラム:ホームページを通じて、自分を表現しよう!
私は、中小企業、個人事業主、あるいは起業に挑戦する人が大好きです。
それは、ビジネスそのものが、その人の人生を投影しているからです。自分の夢や希望を、ビジネスにして挑戦する人はとても素敵ですし、いつでも応援したくなります。
ただ、その応援の方法として正しいことは、ホームページ作成を私が代行することではなく、ご自身で運営できるように情報を提供していくことだと考えています。なぜなら、自分のビジネスは、自分で発信し続けること以外にないからです。ぜひ自分のホームページですから、まずは自分でストレスなく運営できるようにして、どんどん発信してみてほしいなと思います。
この記事では、あまり特定の方法をおすすめしたりせず、あくまでも中立的な立場でアドバイスをすることを心がけていますが、もし、あなたがビジネスの初期段階だったり、潤沢な予算がない状況の場合は、はじめから業者にオーダーするのではなく、自分の言葉で、自分の手で、情報発信をはじめてみることがおすすめです。
その経験は、必ずあなたにとって、大きなメリットをもたらしてくれるはずです。応援しています!
ホームページの作り方 無料動画講座のご紹介
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
少しでもこの記事の内容がお役に立つ部分があれば幸いです。もう少し続きの情報も知りたいと感じた方は、以下、無料の動画講座も視聴してみてください。 ホームページ作成ツールの操作なども、ご紹介していますので、参考にしていただけると思います。

ホームページの作り方 完全ガイド版のご紹介
さらに当コラムの続編として、ホームページの作り方に関する完全ガイド版も執筆しています(株式会社リラクス代表・牧野健人さんとの共著)。

また、「1分でわかる!ホームページの作り方診断」と題した、アンケート方式による診断コンテンツもあります。10個の質問に答えることで、あなたのニーズや状況に適したホームページの作り方を判定できるようになっていますので、ぜひお試しください。