ブランディング /

商品企画からはじまるブランディング

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一般的に企業が経営戦略としてブランディングを考える場合、既存商品、あるいは、現存する企業そのものを対象とするケースが多い。しかし、私はこれまでのブランディングワークの中で、既存商品や既存組織に、服を着せるかのようにブランディングを施しても、本質の課題には届かないと実感することが多々あった。
今回は、商品の企画段階で、ブランディング的とも言える視点でモノづくりを行い、成功している事例をひとつ紹介する─。
(執筆:佐野彰彦/株式会社それからデザイン代表)

ファンがこぞってシェアするDIYプロダクト
PILLAR BRACKET(ピラーブラケット)

株式会社コンクリエイトデザインが運営するDIYプロダクトブランド“PINK FLAG”は、自分の部屋を楽しくDIYでカスタムすることができる魅力的な商品を製造販売している。「PILLAR BRACKET(ピラーブラケット)」は、ツーバイフォー材にはめる金属ユニットのアイテムで、誰でも簡単に、棚をつくることができるもの。現在製造が追いつかないほどの売れ行きで、人気の高さが伺えます。 驚くことに、この「PILLAR BRACKET」、発売当初からいわゆる広告宣伝に1円も使っていないとのこと。では、どうして人気に火がついたのでしょうか?
代表の佐々木さんに聞くと、DIYユーザーがfacebookやInstagram等のSNSで、“自分のつくった棚”の画像をシェアしていて、それを見た人がまたやってみるという好循環が生まれているとのこと。まさに、ブランディングの成功例の典型ですが、佐々木さん自身は特にブランディングを意識しているわけでもないといいます。

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使われ方をデザインする

ブランディングは、企業広報の手法のひとつ、のように思われますが、PILLAR BRACKETの例を見ると、ブランドが自然発生的に起こることもあることがわかります。
PILLAR BRACKETが一般的なプロダクトと違う点は、ユーザーの価値がモノにあるわけではなく、コトにある点です。「棚をつくれるキット商品」ならいくらでも類似商品はありますが、DIYユーザーが「私もこんな棚をつくりたい」「こんな部屋にしたい」という世界観に共鳴していることです。
コンクリエイトデザインの佐々木さんの本業はグラフィックデザイナー。大手出版社のブックデザインを手掛ける一方で、DIYアイテムの企画開発〜製造までを手がけています。そして、自分の自宅やオフィスに自ら企画したDIYアイテムで、コトを楽しんでいます。
ハードウェアの製造ではなく、ユーザー視点での「使われ方」をプロデュースしているといえるでしょう。

「何をつくり、何を伝えるか」から、ブランディングは始まっている

ブランディングの本質は、商品の企画段階からはじまっているといえます。企業ブランディングであれば、企業理念がブランディングの大きな鍵を握ります。
つくった後で、広告宣伝的発想でブランディングを考えるのではなく、何をつくり、世に何を伝えるのか、そのフィロソフィーこそが、ブランドをつくる土台になることを考えるべきです。

セミナーのお知らせ

セミナー名 グラフィックデザイナーがつくるプロダクトデザイン〜「考える種を蒔く人」第1回
ゲスト 佐々木拓人(コンクリエイトデザイン代表) 聞き手 佐野彰彦(それからデザイン代表)
日程 2016年5月13日(金)
時間 18:30開場 19:00〜講演開始
場所 TURN harajuku(渋谷区神宮前)
料金 1000円(1ドリンク付き)
定員 30名

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佐野彰彦

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