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「DRAFT 宮田識 仕事の流儀」刊行記念トークに参加しました

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先日青山ブックセンターで、気になるトークイベントがあったので参加してきました。 参加したのは、モスバーガーやKIRIN 世界のKitchenシリーズなどのクリエイティブを手掛けるDRAFTの代表にして、ブランディングの第一人者、宮田識さんの新刊「仕事の流儀」刊行記念トークイベントです。

デザイナー、クリエイターを対象としたトークイベントだったのですが、随所に”これこそブランディングの真髄だな”と思うお話もあり、興味深い内容だったので、その一部をご紹介したいと思います。

デザイナーは訓練が足りない

トークは日経デザイン編集長の花澤さんが、宮田さんにテーマに沿って質問する形式で進むのですが、最初のテーマは「アスリートと比べてデザイナーは訓練が足りない?」というものでした。

“訓練”という言葉を使っていらっしゃるあたり 「なるほど」 と、唸らされます。

宮田さんはよく「デザイナーは訓練が足りない」とお話しているそうです。「野球選手は小学生くらいから素振りを始めて、選手になってからも毎日のトレーニングを欠かさない。それに比べてデザイナーは訓練が足りない」と。

デザインができるかどうかはセンスの問題だ、などと片付けられることも多いですが、宮田さんはデザインを感覚的なものというより身体的なものとして捉えているということがわかります。

最近、弊社内でも「デザインって教えられないよね」という話が挙がったのですが、誰かにデザインを教えようとしてもなかなか教えられるものではありません。

たくさんの言葉で教えようとするよりも、自分で手を動かしてもらって、ああでもないこうでもないと、試行錯誤するうち、急に線幅や余白が目に入るようになります。

気持ちのいい線幅や余白を感じるといったデザインの基礎力のようなものは学べるものではなく、筋トレのように毎日繰り返すことでしか養われないのだろうなと改めて感じました。やっぱり毎日積み重ねられる能力こそが才能なんですよね。

どんな訓練が必要か

では、どんな訓練をすればいいのでしょうか。 宮田さんが挙げたのは「何かをする前に準備する」という訓練です。 例えば打ち合わせの前に、必ず自分なりに考えて、準備する。「間違っててもいいから、今自分が持っている情報の中で”考えて”おくことが大事だ」と言います。 デザイナーだけでなくディレクターにも必要な訓練ですね。 「メールや電話だと伝わらないから会わなければダメ」「メールでのやりとりは準備を怠っているのに等しい」などハッとさせられるお話もたくさん出ましたが、クライアントと対等に話すには相手のことを考えることが必要だ、ということだと思います。 クライアントと同じ船に乗って、ずっと付き合っていくというのは、簡単なことではありません。こうすればいいのではないか、ああすればいいのではないかと常にクライアントのことを考えなければなりません。自分ごととして相手のことを”考える”ことが必要なのです。 プロジェクトの成否を決めるのは、最後は気持ちや想いです。そこに至るまでには“考える”ことが大事なんだと、改めて感じさせられました。

良いデザインとは

トークイベントの中で最も面白かったのが「良いデザインとは?」というテーマでした。宮田さんの答えは「デザインにこの方法しかないということはないので、良いデザインというものは定義できない」というものです。宮田さんにとっては地域も会社もモノも自分も全てがデザインだそうです。 いわゆる広義のデザインですね。 DRAFTの事例を見ていて思うのですが、マーケティング的なフレームワークを使っているようには見えない、けれど、DRAFTの仕事はブランディングになっています。 なぜそうなるのだろうと、トークイベントの後もずっと考えていたのですが、最近思いついたことがあります。 それは、「デザインという概念を広げていくと結果的にブランディングに近づくのではないか」ということです。 考えてみれば「作り手の想いがどんなものか徹底的に話合い、お客さんにどう伝えるかを緻密にデザインする」といったデザインプロセスは、コンセプトをいかにお客さんに伝えるかというブランディングのプロセスと同じです。 DRAFTの仕事がブランドを作っているのも、デザインを拡張して考えているから、自然とブランディングになっていくのでしょうね。 そういった意味で「ブランディングは究極のデザインだ」とも言えます。

おわりに

宮田さんのブランディングは身体的で感覚的で、とても新鮮でした。また、経験に裏打ちされているがゆえに話に重みがあって、まるでデザインの仙人の語りを聴いているようでした。イベント終了後に書籍を購入したので、少し落ち着いてゆっくり読みたいと思います。

DRAFT 宮田識 仕事の流儀
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語 宮田識 編 花澤裕二 日経BP社 2016年12月

この記事を書いた人

永井史威

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