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「インターネットの登場によってメディアのあり方はどう変わるか。」
ここ20年くらいずっと議論され続けているトピックです。

僕がちょうど社会に出る2000年前後、出版社はトレンドを生み出すクリエイティブな業界で、
編集者は花形の職業でした。当時、僕もメディアに憧れて、縁あって雑誌社の広告部に入社しました。

しかし、7、8年くらいしてインターネットが徐々に浸透すると、状況は一変、雑誌、書籍の売上が頭打ちになります。「インターネットは新しいメディアになり、雑誌に取って代わる」と言われ始め、以後、現在に至るまで出版業界は長らく停滞してしまいます。

仮説と検証

本書は、そんな出版不況といわれる時代に「宇宙兄弟」「ドラゴン桜」など次々とヒット作品を生み出した編集者、佐渡島庸平さんによる著書です。

大手出版社を退職し、作家のエージェント業という日本ではまだまだ新しい職業分野で活動する著者の発想法や仕事に臨む際の心構え、感情のコントロール方法などが論理的ながらも熱のこもった言葉で綴られています。

著者の基本姿勢は「仮説・検証」。第一章ではその基本的な思考方法について書かれています。
私たちは情報を集めて、その情報をもとに仮説をたてようとします。

しかし、すでにある過去の情報から仮説を立てても新しいものは生まれません。
新しいものを生み出すためには自分のやりたいことを決めて、仮説を立て、その仮説を補強するために情報を集める、という順番で思考しなければならない、と著者は説きます。

客観的視点

続く第二章、第三章では時代を変える大胆な仮説を立てるための発想法が挙げらるのですが、僕が興味深く感じたのは「出版業をビジネスモデルから見る」といった著者の客観的な視点です。

コンテンツを作る側にいると、どうしてもコンテンツの内容ばかりに目がいってしまいます。本が売れないのは企画やコンテンツが悪いからだ、と思い込んでしまうのです。しかし、著者はコンテンツではなく、ユーザーに焦点を当てることで、どのようなコンテンツが求められるか客観的に分析しています。

例えば僕たちは、プロが書いた原稿より質が高いわけではないSNSのくだらない投稿が気になったり、
高級レストランのシェフが作ったものより、おふくろの味がやっぱり美味しいと思ったりします。

このような現象が起こるのはユーザーが感じる“おもしろさ”が質の高さだけを基準にしているのではなく、「親近感✕質の絶対値」を基準にしているからなのではないか。
そう仮定すると、これからのコンテンツには質とともに、いかに親近感を持ってもらうかが必要ではないか、と著者は言います。

このように、この著書からはインターネット時代にどういうコンテンツが求められるのか、たくさんのヒントを得ることができます。
「インターネットの登場によってメディアのあり方はどう変わるか。」という長年の議論にも、ユーザー目線で分析すると、答えが見えてくるのではないかと予感させられます。

おわりに

後半では仕事に対する心構えなどにも触れられていて、媒体を問わずコンテンツを制作する全ての方が押さえておくべきヒントがこの本にはたくさん詰まっています。

著者の世の中の見方、分析も秀逸で、例えば漫画「インベスターZ」の取材をもとにお金の変化について説明したり、ペットボトルの「水」を例にモノの時代からストーリーへの時代への変化を説明したり、
なるほどと思わされる例で解説されています。

論理的ではありますが、熱っぽい語り口が心地よく、読みやすいのであまり構えずに仕事の合間に読むのがオススメです。

ぼくらの仮説が世界をつくる
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佐渡島庸平 著
ダイヤモンド社 2015年12月

 

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